日本食チェーン、アメリカで存在感 巨大市場への進出を成功に導く「現地化」の条件
くら寿司株式会社
更新日時:11月4日 14時00分
2026年11月4日
株式会社くら寿司
くら寿司 ニュースレター2026年11月号
日本食チェーン、アメリカで存在感 巨大市場への進出を成功に導く「現地化」の条件
アメリカ進出を加速する日本の外食企業
人口の減少が進み、国内市場の縮小は避けて通れない日本。そんな日本の外食企業にとって、海外はさらなる成長を描ける次のステージです。とりわけアメリカ市場は、巨大な消費人口と多様な食文化を併せ持つ有望市場。ヘルシーで質の高い日本食への高い関心も追い風といえます。
近年も、日本の外食企業によるアメリカ進出は相次いでいます。2025年12月には、ロイヤルホールディングス、銚子丸、双日が共同でカリフォルニア州に寿司店「SUSHI NIGIRIBA」のアメリカ1号店を開業。2026年5月には「大阪王将」も三菱食品と共同でロサンゼルスに北米初となる旗艦店をオープンするなど、日本発の外食ブランドが相次いでアメリカ市場へ進出しています。
こうした新規参入が相次ぐ一方で、すでにアメリカで確かな存在感を築いている日本発の外食企業もあります。その一つが「Kura Sushi USA」(以下、くら寿司USA)です。2009年にカリフォルニア州アーバインに1号店を開業し、2019年には米国ナスダック市場へ上場。現在は全米で約100店舗(2026年11月時点)を展開し、アメリカ最大の回転寿司チェーンへと成長しています。
もちろん、出店すれば必ず成功できるほど単純な市場ではなく、出店して間もなく撤退を余儀なくされる事例も珍しくありません。海外進出を成功に導くには、物価や人件費、食文化、チップ制度、不動産慣行まで、日本とは異なる店舗運営の壁がいくつもあるのです。では、日本の外食企業がアメリカで生き残るには何をクリアすべきなのか。本ニュースレターの前半では、アメリカ外食市場の現在地と日系外食企業の動向を紹介。後半では、アメリカで100店舗到達を目前とするくら寿司USAの歩みから、海外出店で成功するための条件を読み解いていきます。
本ニュースレターは以下の情報をご紹介
① アメリカの外食文化と拡大する日本食市場の動向
② アメリカへ進出する日系外食企業の事例と「現地化」の取り組み
③ くら寿司USA 姥社長が語る、アメリカ進出の歩み
④ くら寿司USAの成長を支えた立地・組織・店舗・メニューづくりのローカライズ
⑤ 日系外食企業として初めて米国ナスダック市場へ新規上場し、1スクエアフィート当たりの売り上げナンバーワン※1になったくら寿司USAの今後の展望
※1:アメリカに上場しているカジュアルダイニングチェーンの中でNo.1
アメリカの外食はどう違う? 四つのレストラン業態
広大なアメリカでは、ニューヨークなど一部の都市部を除き、車移動を前提とした生活圏が広がっています。郊外では大型駐車場を備えたショッピングセンターやライフスタイルセンターにレストランが集まり、ドライブスルーやモバイルオーダー、テイクアウトも日常的に利用されています。
そんなアメリカの外食市場を理解する上で知っておきたいのが、「外食スタイル」です。厳密な線引きがあるわけではありませんが、大きく分けると次の4つに整理できます。
「ファストフード」…
マクドナルドやバーガーキングなどに代表される、手軽さとスピードを重視した業態。カウンターで注文し、短時間で商品を受け取るスタイルが基本です。価格は比較的リーズナブルで、テイクアウトやドライブスルーとの相性も良く、一般的にチップは必要ありません。
「ファストカジュアル」…
注文方法はファストフードと同じくカウンター形式が中心ですが、食材や調理方法、店内空間などによりこだわり、価格帯はファストフードよりやや高めです。「早くて手軽」だけでなく「少し質の高い食事」を提供する業態といえます。チップを払う人は着席型レストランに比べると少ないです。
「カジュアルダイニング」…
スタッフが注文を取り、料理をテーブルまで運ぶフルサービスが基本です。家族や友人とゆっくり食事を楽しむ場所として利用する人が多く、一般的にチップを支払います。
「ファインダイニング」…
料理だけでなく、接客や内装、空間を含めた食事体験そのものを重視する高級レストラン。記念日や接待など特別な機会で利用されることが多く、コース料理や担当スタッフによるきめ細かなサービスが受けられ、ドレスコードを設ける店舗もあります。チップを支払うのが一般的です。
【では「回転寿司」はどこに入る?】
アメリカではカジュアルダイニングに位置付けられています。一方で、回転レーンやタッチパネル注文、注文専用レーンなどを活用し、注文や料理提供を効率化している点は、ファストカジュアルに通じる要素ともいえます。
つまり、カジュアルダイニングとしての食事体験をベースにしながら、テクノロジーによって効率性を高めた業態と捉えると分かりやすいでしょう。
なぜ今、日本の外食企業はアメリカを目指すのか
成長余地の大きいアメリカにおいて、寿司やラーメンはすでに都市部の一過性ブームを超え、日常外食の選択肢へと移りつつあります。2013年の「和食」のユネスコ無形文化遺産登録や、各地の日本食店への高い評価も、日本食の認知と信頼を押し上げました。2022年に発表されたミシュランガイド・カリフォルニア版においても多くの日本食レストランが星を獲得するなど、高い評価を受けています。すでにアメリカで評価されているお店を見回してみると、「日本で成功したモデルをそのまま持ち込んだ」のではないという共通点が浮かび上がってきます。現地の価格帯、食べ方、雇用環境、商圏に鑑みながら、日本企業ならではの品質や体験をうまく盛り込むことが、アメリカで成功する鍵となっています。
ちなみに、当時、外食に限らず、韓国や中国など、アジアに展開し始める企業が多い中、くら寿司がアメリカを初の海外出店先に選んだのは、海外に出店するなら、世界最大のマーケットであるアメリカで勝負したいという思いがあったためです。
多様化、全土化する日本食チェーン
1970年代、アメリカではカリフォルニアロールをきっかけに寿司ブームが到来。当初は生魚ではなく創作寿司がオーダーの中心でしたが、現在は物流・冷蔵技術の発達により、本格的なにぎり寿司や多様な魚種を楽しめる環境が整いました。日本の寿司文化は、アメリカの人々が生魚のおいしさを知る入り口となりました。
現在、アメリカの日本食市場は、寿司や天ぷらといった伝統的な和食に加え、ラーメン、うどん、焼き鳥、居酒屋、カレー、おにぎりなど、さまざまなジャンルに広がっています。全米の日本食レストランは、1992年の3,051軒から2025年には23,981軒へと約7.9倍に増加※2。円安に伴う訪日旅行客の増加や健康志向の高まりなどから日本食への注目度は高く、カリフォルニア、ニューヨークといった沿岸部の大都市だけでなく、内陸部でも店舗数が伸びています。
ただし、アメリカ国内の日本食レストラン約23,000店舗のうち、日本人が経営している店舗は1割〜2割程度(約2,300〜4,600店舗)※2。ジェトロ(日本貿易振興機構)による日系食品商社へのヒアリング調査によると、残りの8割以上は中国人や韓国人、ベトナム人など日本人以外のオーナーによって経営されています。だしをきかせたり、魚の鮮度を管理したり、といった日本の食文化を熟知する日本人経営の店舗は意外と少ないのが実情です。
※2出典:2025 年度米国における日本食レストラン動向調査/米国輸出支援プラットフォーム(https://www.jetro.go.jp/ext_images/agriportal/platform/us/2026/us_Report2025.pdf)
アメリカで成功を収めている日系企業の一例
①吉野家——牛丼をアメリカの日常食へ <ファストフード>
1975年にアメリカへ進出し、手頃で早い日本のファストフードとして牛丼をアピール。2026年9月時点で100店舗を運営。2026年7月には、アメリカでラーメン店を展開するキズキインターナショナルを約2,870万ドル(約47億円)で買収すると発表。現地基盤を持つ企業へのM&Aも成長手段になっている。
②牛角——「Japanese BBQ」という食体験を定着 <カジュアルダイニング>
2001年、ロサンゼルスにアメリカ1号店を開業。現在は全米で64店舗(2026年10月時点)を展開し、日本式焼き肉を「Japanese BBQ」として訴求している。料理そのものに加え、生肉を無煙ロースターで焼きながらシェアして食べる、カジュアルダイニングでの体験そのものも人気の理由。隣国カナダにも店舗を拡大中。
③丸亀製麺——日本のうどんを現地ニーズに合わせて <ファストカジュアル>
海外初出店は2011年のハワイ・ワイキキ、2017年にはロサンゼルスにアメリカ本土1号店を出店。2026年8月時点で23店舗(ハワイ2店舗・グアム1店舗を含む)を運営。店内製麺やセルフサービス形式という日本発の強みに、ガーリックチキンサラダなどの現地向け商品を組み合わせて提供。
くら寿司USA、100店舗までの歩み「Kura Sushi USA」社長兼CEO 姥 一(うば はじめ)にインタビュー
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■組織のローカライズが成長のエンジン
実はくら寿司のアメリカ進出は回転寿司ではなく、2007年、ロサンゼルスの金融街・センチュリーシティに開業した日本食レストランでした。しかし開業後、間もなくしてリーマン・ショックがあり、倒産やリストラによって金融街の景気は悪化。1年ほどで撤退を決断しました。この苦い経験を学びに変え、くら寿司USAは、「知名度の高い都心」ではなく、「平日昼・夜、週末を通じて集客できる郊外」に目を向けます。
17日間かけ、車でアメリカ大陸を横断し、生活者の所得、外食価格、商業施設の人流を観察した末、2009年にカジュアルダイニングの新ジャンルとして、カリフォルニア州アーバインに回転寿司の1号店を開きました。
そこから17年をかけて、日本企業の規律や粘り強さとアメリカ企業の専門性、報酬設計とを組み合わせたハイブリッド型の組織を構築。2020年のコロナ禍では、他社が出店を止めた局面をチャンスと捉え、店舗開発や人事の優秀な現地人材を採用。株式報酬も活用しました。逆風を人材と組織を強化する機会に変えたことが、店舗拡大のエンジンとなったのです。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102330/202611049287/_prw_OT1fl_1SCK6k59.png】
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くら寿司フルサービス導入前の店内の様子
■くら寿司USAの持続的な成長を支えた四つのキーワード
① 立地選定はブローカー任せにしない
有名都市の一等地は分かりやすい一方、賃料が高く、競合も多い。そこで、くら寿司USAは、郊外のライフスタイルセンターやショッピングモールをターゲットに選定。候補地を自ら探した上で、交渉をブローカーに依頼しました。日常的な来店が見込める商圏を優先することで、全米展開に耐えるモデルを築きました。
② 物件に合わせて自在にレイアウト変更
アメリカでは、日本のロードサイド店のような定型物件を確保しにくく、プロトタイプにこだわると良い物件を逃すことになるため、面積や区画形状に合わせて、柔軟に店舗レイアウトを設計しました。現在は約20パターンほどそろう基本レイアウトは、くら寿司USAの見えない資産になっています。
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③ 現場観察からメニューをローカライズ
アメリカのお客様の反応を見ながらメニューを再考。「スパイシー」「クランチ」「クリスピー」といった分かりやすい味わいとネーミングが好まれ、名称変更だけで売り上げが約 10倍になった商品も存在します。不動の人気が続くのは、肉系のにぎり。サーモンやうなぎといった脂ののったネタも定番の人気です。揚げたパン粉、スパイシーソース、甘いタレを合わせた「ゴールデンクランチロール」もオリジナリティーが勝因となったヒット商品。一方で、ヒットを期待した生ズワイガニや生ダコを手に取るお客様は少なく、なじみのある素材や食べ方との接点が重要なのだと再確認しました。
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ゴールデンクランチロール
④食をエンターテインメントにする
くら寿司USAの成功要因は、「くら寿司のビジネスモデルが80%、ローカライズが20%」です。コンベアベルト、タッチパネル、高速レーン、「ビッくらポン!」は、料理を運ぶ仕組みにとどまらず、未知なる体験へと進化させました。スマートフォンとSNSの急速な普及もあり、お客様が楽しさを自発的に共有し、エンターテインメントを求める人が新たに来店する好循環が生まれました。
■100店舗の次は、300店舗&売り上げ10億ドル
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2019年、くら寿司USAは日系の外食企業として初めてNASDAQへ新規上場。1スクエアフィート当たりの売り上げは、上場しているカジュアルダイニングチェーンの中で最も高く※3、2026年12月には100店舗目のオープンを予定しています。
ここからの長期目標として掲げているのは、年間出店を20店舗規模へ引き上げ、10年後をめどに約300店舗へ。そのための体制はすでに整いつつあります。アメリカ市場には、高コストと競争という厳しさがあります。それでも、日本ならではの食文化や店舗体験を核に、ニーズへの対応、テクノロジー、柔軟な組織運営を組み合わせれば、全米を笑顔にする外食企業へと進む道は開けます。くら寿司USAの成長は、日本の外食企業が築いてきたオリジナリティーと、現地で柔軟に変わっていく勇気があれば、成功できる可能性を示しています。
※3出典:Restaurant Benchmark Analysis:19th Annual Cookbook/PIPER SANDLER2025年8月
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Kura Sushi USA社長兼CEO 姥 一(うば はじめ)
1977年大阪府生まれ。関西大学卒業後、2000年くら寿司入社。店長やスーパーバイザーを経て、店舗オペレーションの責任者に。2007年にアメリカ進出に伴い現地へ赴任。翌年に現Kura Sushi USA, Inc.を設立し、CEOに就任。
アメリカ進出が加速する回転寿司業界
スシローは2026年秋、NYのタイムズスクエアにアメリカ1号店をオープン予定。元気寿司は、ハワイを中心にワシントン州にも展開し、アメリカで12店舗を展開しています(2026年6月時点、テイクアウト専門店1店舗を含む)。
がってん寿司も2010年にカリフォルニア州へアメリカ1号店を出店するなど、回転寿司各社による進出が続いています。
一方、「はま寿司」は自社出店による海外展開ではなく、2018年にはま寿司を運営する株式会社ゼンショーホールディングスがアメリカのテイクアウト寿司の大手Advanced Fresh Concepts Corp. (以下、AFC)を子会社化。買収当時、AFCはアメリカ国内で約3,700店舗を展開しており、スーパーなどを中心とした持ち帰り寿司事業を通じてアメリカ市場への展開を進めています。







