EYストラテジー・アンド・コンサルティング、防災・減災投資の「規模」と「優先順位」を提言
EY Japan株式会社
更新日時:10月20日 11時00分
~既存計画を土台とした投資判断の目安と、地域特性に応じた着手順を2本のレポートで提示~
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡、以下EYSC)はこのたび、「復旧の国から、備える国へ わが国における適切な防災・減災投資に関する考察」および「備えの順序が、地域の未来を分ける 防災・減災投資における自治体類型別優先順位の考察」の2本のレポートを公開しました。
国編では、既存の第1次国土強靱(きょうじん)化実施中期計画を土台に、国・地方・公営企業等を含む日本全体の総事業規模について、GDP比0.620~0.700%(年間約4.2~4.7兆円)を暫定的な目安として提示しています。*
自治体編では、地域ごとの災害リスクや財政・人材面の制約を踏まえ、防災投資の優先順位を検討するための独自の分析枠組みを提示しています。
*:中央政府の防災関係予算とは集計範囲が異なるため、本試算は政府予算の目標額を示すものではありません。
近年、自然災害の激甚化・頻発化に加え、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの大規模災害への備えも重要性を増しており、防災・減災は災害発生後の復旧対応だけでなく、事前の備えを通じて将来の被害を軽減するための戦略的な投資として捉えることが求められています。
また防災・減災の実効性を高めるためには、投資規模だけでなく、地域特性やリスクに応じた優先順位付け、さらには実行を支える制度や人材の在り方まで含めた総合的な視点が重要となっています。
こうした課題認識のもと、EYSCに所属するインフラ、防災・危機管理、地域政策、データ活用など、多様な専門領域のプロフェッショナルが知見を結集し、防災・減災投資の在り方を考察しました。今回公開した2本のレポートでは、国と地域の双方の視点から、レジリエントな社会の実現に向けた提言を取りまとめています。
日本全体の防災・減災投資について、規模の目安と判断の枠組みを提示
「復旧の国から、備える国へ わが国における適切な防災・減災投資に関する考察」では、災害を「発生後に対処する出来事」ではなく、「発生前から管理すべき国家リスク」と位置付け、日本全体の防災・減災投資について、総事業規模の暫定的な目安と投資判断の考え方を示しています。
国編レポートの主なポイント
・防災投資を「支出」ではなく「将来損失を抑えるための投資」と位置付け
・国・地方・公営企業等を含む日本全体の総事業規模について、GDP比0.620~0.700%(年間約4.2兆~4.7兆円)を暫定的な目安として提示(対象分野:国土強靱化、気候変動対策、ライフライン強化、地域防災力、防災DX等)
・第1次国土強靱化実施中期計画を試算の起点とし、既存事業との重複を考慮した純追加分を検討
・国費相当分については、総事業規模の内数としてGDP比0.297~0.359%(年間約2.0兆~2.4兆円)の暫定的な目安を整理
・GDP比0.70%を超える追加投資の判断基準として「追加性」「投資効果・社会的重要性」「執行能力」「地方負担能力」「効果検証・撤退ルール」の5つの判断ゲートを提言
・投資の効果と事業の実行可能性を継続的に検証し、投資規模の目安や事業の優先順位を見直すことを提言
地域特性に応じた防災投資の優先順位を提言
「備えの順序が、地域の未来を分ける 防災・減災投資における自治体類型別優先順位の考察」では、防災投資は「いくら投資するか」だけでなく、「何を守るか」「何から始めるか」「誰が実行するか」の観点から設計する必要があるとして、地域特性に応じた優先順位付けの考え方を提示しました。
自治体編レポートの主なポイント
・自治体が直面する課題を財政・人材・リスクの「三重の偏在」と整理
・Type A 大都市・都心型、Type B 沿岸・巨大地震・津波型、Type C 河川・都市水害型、Type D 中山間・半島・離島型、Type E 豪雪・寒冷地型、Type F 火山近接型の6つの主要類型と、Type G 人口減少・執行能力制約横断型の1つの横断類型からなる、EY独自のフレームワークを提示
・類型ごとに優先的に取り組むべき防災投資分野と着手順を整理
(特定地域への機械的な予算配分を示すものではなく、地域特性に応じた重点分野や着手順を検討するための枠組み)
・発災後72時間を見据えた「命を守る対策」を最優先領域として提言
・財政支援と技術人材支援を一体で設計する必要性を提示し、国・都道府県・市町村・公益事業者・民間事業者の役割分担を整理
・都道府県が小規模自治体を支える仕組みとして、既存システムの連携・共同利用を基本とする「地域防災レジリエンス基盤(仮称)」の整備を提案
EYSC リスク・コンサルティング パートナー 森 勇雄のコメント:
「日本の防災・減災は世界各国から見ても非常に進んでいますが、今後はさらに事後対応から事前防災・予防保全へと進められていく中で、『地域の特性を踏まえて中央と地方の役割分担をどのように高度化していくか』、『そのために必要な投資予算と配分はどうあるべきか』は、今後の取り組みにおいて非常に重要なテーマとなります。日本全体が一丸となって防災・減災のさらなる高度化を進め、誰もが安全に安心して暮らせる社会を実現するために、本提言が少しでもお役に立てれば幸いです」
EYSC リスク・コンサルティング パートナー 原田 幸憲のコメント:
「防災投資の成果は『起きなかった被害』として現れるため、見えにくいものです。だからこそ防災は、『支出』ではなく将来の損失を抑える『投資』として捉え、その効果を問い続けるべきテーマです。今回の提言では、既存計画を土台に、限られた財源を被害軽減効果や社会的重要性の高い事業へ振り向けるための判断軸を示しました。成果を測り、効果の低い事業は見直す。こうした規律ある投資判断が、次の災害で守れる命と暮らしを左右すると考えています」
EYSC 公共・社会インフラセクター パートナー 國島 常司のコメント:
「災害への備えは、もはや『何を整備するか』だけではなく、『限られた資源で何を実現するか』という経営課題になっています。人口減少や技術人材不足が進む中、地域の実情を踏まえた優先順位付けと実行力の確保は、持続可能な防災・減災を実現する鍵です。本レポートが、自治体の意思決定と実装の高度化に向けた議論の一助となれば幸いです」
※国編で示した投資規模は、一定の損失削減率、費用便益比、既存計画との重複率などを前提とする試算に基づくものであり、その幅は統計的な信頼区間ではありません。事業の効果や実行可能性などを踏まえ、継続的に見直すことを前提としています。
各レポートは、下記よりダウンロードいただけます。
防災投資は「1兆円」で足りるのか――中央政府予算と総事業規模を分けて考える
備えの順序が、地域の未来を分ける――自治体の防災投資は「どこから」で決まる
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