VHF帯狭帯域IoT通信システムWi-SUN FANを用いた飛行中ドローンからの高解像度ライブ映像伝送に成功
京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻 原田研究室
更新日時:9月28日 14時45分
―狭帯域・長距離IoT通信で高品質なリアルタイム映像伝送を実現―
2026年9月28日
京都大学 原田博司研究室
国立大学法人京都大学情報学研究科 原田博司教授の研究グループ(以下「京都大学」)は、2025年12月に総務省情報通信審議会から一部答申が示されたVHF帯(170MHz帯および220MHz帯)を利用する狭帯域IoT通信システム(以下「VHF-IoT」)として、国際無線通信規格「Wi-SUN FAN」に準拠した、10kmを超える長距離伝送距離が期待できる無線通信システムを開発しました。さらに、VHF-IoTの限られた通信速度でも映像を伝送できる高効率な映像圧縮伝送システムを開発し、これらをドローンに搭載することにより、実際のドローン飛行中にHD(1,280×720画素)、10fpsのライブカメラ映像を無線伝送する実証実験に成功しました。
1. 背景
近年、大規模災害時における被災状況の把握や生存者の捜索、山間部・離島等への物資輸送など、さまざまな用途でドローンの活用が進んでいます。一方、ドローンとの通信には主に無線LAN(Wi-Fi)や携帯電話システムが利用されていますが、Wi-Fiを用いた通信では通信距離が数百m程度に限られることに加え、数GHz帯の電波を使用するため、森林や地形などによる遮蔽の影響を受けやすく、ドローンが山間部などを飛行する場合に安定した通信を維持することが困難になるという課題があります。また、物流用ドローンなどでは、飛行中の機体の状態や周辺状況を遠隔地から継続的に確認するため、携帯電話網を利用した通信も検討されていますが、山間部など携帯電話網のサービスエリア外を飛行する場合や、大規模災害によって携帯電話網が利用できなくなった場合には、通信を継続できない可能性があります。こうした課題を解決する通信手段として、Wi-Fiや携帯電話システムで主に利用される周波数帯よりも低く、森林や地形などによる遮蔽の影響を受けにくいVHF帯を利用し、長距離かつ広範囲を面的にカバーできる狭帯域IoT無線通信システム(VHF-IoT)の検討が進められています。VHF-IoTの技術的条件については、2025年12月に総務省情報通信審議会から一部答申が示され、下側周波数帯170.0~177.5 MHzおよび上側周波数帯217.5~222.0 MHzを使用し、最大5 Wの空中線電力による運用などが示されました。VHF帯の電波伝搬特性を活かすことにより、公共・公益性の高い機関等が利用する自営通信網として、携帯電話網が利用できない山間部や災害時などにおける広域IoT通信への活用が期待されています。京都大学では、これまでにVHF-IoTに対応した無線伝送装置を開発し、2026年5月には30 kmを超える長距離無線伝送の実証に成功しました。一方、この実証は1対1の伝送を中心としたものであり、 FSK変調でVHF-IoTの上側周波数帯での400 kHzという限られた周波数帯域を利用しており、伝送速度は150kbit/sにとどまっていました。災害現場の監視や捜索、物流用ドローンなどへの実用化に向けては、VHF帯の長距離伝送特性を活かしながら、複数の無線機によるネットワーク通信を実現するとともに、限られた周波数帯域でも飛行中のドローンからより滑らかなライブ映像を安定して伝送できる技術の実現が求められていました。
2.研究成果
京都大学では、VHF帯の限られた周波数帯域を用いて高速かつ高品質なデータ伝送を実現するとともに、飛行するドローンとの無線接続を自律的に構築するため、OFDM方式を用いた国際無線通信規格「Wi-SUN FAN」に準拠し、170 MHz帯および220 MHz帯のVHF-IoTに対応した無線通信システムを開発しました。本システムでは、占有帯域幅400 kHzの場合に600 kbit/s、1,200 kHzの場合にはWi-SUN FANで規定される最大2,400 kbit/sの伝送速度を実現できます。また、Wi-SUN FANのネットワーク機能を利用することにより、地上局とドローンとの間で自律的に無線接続を構築し、IPベースのデータ通信を行うことが可能です。さらに、飛行するドローンと地上局との間では、距離や位置関係、周囲の地形などによって電波伝搬環境が時々刻々と変化します。このような時変する無線通信環境においても安定してライブ映像を伝送するため、複数の映像パケットをまとめて効率的に伝送する「パケットアグリゲーション」と、映像を構成するフレームの重要度に応じて伝送を制御し、重要な画像フレームを高品質かつ高効率に伝送する独自の映像圧縮・伝送方式を開発しました。Wi-SUN FAN技術と高効率な映像圧縮・伝送方式を組み合わせることにより、VHF帯の限られた通信速度においても、高品質なライブ映像を安定して伝送する無線映像伝送システムを実現しました。開発したシステムを用いて、災害時などにおける広域監視を想定したドローン飛行実験を実施しました。ドローンには、VHF帯Wi-SUN FAN無線機(ルータ)、カメラおよび映像伝送システム送信局を搭載し、地上25 mおよび50 mの高度を飛行させながらライブカメラ映像を送信しました。地上では、VHF帯Wi-SUN FAN無線機(ボーダールータ)で受信したデータを映像伝送システム受信局で復号し、映像をリアルタイムに表示・録画しました。その結果、VHF帯の狭帯域通信でありながら、飛行中のドローンからHD解像度(1,280×720画素)、フレームレート10 fpsの鮮明なライブ映像を10分以上安定して伝送できることを確認しました。さらに、占有帯域幅400 kHzでの映像伝送に加え、占有帯域幅1,200 kHz、伝送速度2,400 kbit/sでの映像伝送にも成功しました。
3.今後の展開
今回の実証実験では、VHF帯Wi-SUN FANを用いて、実際に飛行するドローンからHDライブ映像を安定して伝送できることを基礎伝送試験により確認しました。今回の伝送距離は約50 mでしたが、今後はVHF帯の長距離伝送特性を活かし、数km規模の伝送距離を視野に入れ、飛行高度、伝送距離、地形、遮蔽物などの条件を変化させた実環境でのドローン飛行・映像伝送試験を進めます。さらに、Wi-SUN FANが有する自律的なネットワーク構築機能と、20段以上の多段中継が可能なマルチホップ通信機能を活用し、複数の地上局やドローンが相互に通信しながら広域な通信エリアを形成する、新たなドローン配送管理通信システムの提案・実証を進めます。これにより、携帯電話網が利用できない山間部や、通信インフラが被災した地域を含む広い範囲においても、飛行中のドローンの位置・状態や周辺状況を遠隔から継続的に把握できる高信頼な通信システムの実現を目指します。また、映像圧縮方式、パケットアグリゲーションおよび映像伝送制御方式をさらに高度化することにより、限られたVHF帯の通信速度を有効に活用し、現在実現しているHD解像度から、さらに高いフレームレートで滑らかなライブ映像を伝送できる映像圧縮・伝送システムの開発・実証を進めます。これらの技術を統合することにより、災害時の状況把握や捜索・救助、山間部におけるインフラ監視、物資輸送などへの応用を進め、VHF帯Wi-SUN FANを活用した広域・高信頼な次世代ドローン通信システムの実現を目指します。
詳しくは
https://www.dco.cce.i.kyoto-u.ac.jp/ja/PL/PL_2026_07.html
をご覧ください。

