世界初※1、京セラと東北大学がシリコン光回路上に直接集積可能な光アイソレータ技術を開発
京セラ株式会社
更新日時:9月10日 14時15分

AIデータセンターなどの高速・低消費電力化に求められる 光電融合チップの高度集積化に貢献

2026年9月10日
京セラ株式会社
国立大学法人東北大学

京セラ株式会社(代表取締役社長:作島 史朗、以下:京セラ)と国立大学法人 東北大学 電気通信研究所(所長:石山 和志、以下:東北大学)は、共同研究により、レーザー光による局所的な熱処理手法「レーザーアニール」を用いて、シリコン光回路上に光アイソレータを集積する技術を新たに開発しました※1。光アイソレータは、回路内で反射して戻る光を抑え、通信を安定させるための部品です。

本成果をまとめた論文は、2026年9月3日(木)、米国電気電子学会(IEEE)発行の学術誌「IEEE Access」に掲載されました。

 

※1 レーザーアニール手法を用いたシリコン光回路上に光アイソレータを集積する技術において。2026年7月、京セラ調べ。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609085497-O6-9P4ba887

 

レーザーアニールを用いてシリコン光回路上に集積作製した、光アイソレータの顕微鏡画像

 

■開発背景

生成AIの普及などにより、世界のデータ通信量が急増する中で、通信の高速化と省電力化を実現するため、電気配線に代わり光で信号を伝えるシリコンフォトニクス※2の活用が進んでいます。特に、光回路と電子回路を半導体チップと同一パッケージに集積することで、電気信号の伝送距離を短くし、消費電力や信号損失を抑えるCPO(Co-Packaged Optics)の開発が世界的に加速しています。

光回路では、内部で反射した光がレーザー光源に入ると、通信品質の低下につながります。この「戻り光」を抑制する光アイソレータは、通信を安定させるために欠かせません。CPOをはじめとする小型・高集積な光回路の実現に向けては、光アイソレータをシリコン光回路上に直接作り込む技術が必要です。

光アイソレータには「磁気光学ガーネット」と呼ばれる結晶材料が使われますが、この材料に光アイソレータとしての機能を持たせるには、約600℃以上の熱処理が必要です。しかし、シリコン光回路のチップ全体を高温で加熱すると、チップ上の電極や配線などの他素子に悪影響を及ぼすおそれがあります。そのため、周囲の電極や配線に影響を与えず、磁気光学ガーネットだけを適切に熱処理する技術が課題となっていました。

京セラと東北大学は、この課題を解決するため、熱処理が必要な箇所にのみ局所的にレーザー光を当てて加熱する「レーザーアニール」プロセスによって、光アイソレータをシリコン光回路に直接作りこむモノリシック集積技術※3の開発に成功。本試作品の動作を実証しました。

 

※2 シリコンフォトニクス:半導体材料であるシリコン上に光回路を形成し、光信号を用いて情報を伝送・処理する技術。

※3 複数の機能素子を同一基板上に一体形成する技術。

 

■開発技術の特長

1)レーザー光による局所加熱で、周囲の回路や電極を傷めず磁気光学ガーネットを熱処理

磁気光学ガーネットが成膜された約700 μm四方の光アイソレータ回路領域のみに、近赤外波長帯のレーザー光を照射します。レーザー光が照射された領域は局所的に加熱され、磁気光学ガーネットは結晶化し、反射した光を抑えるために必要な特性を発現します。チップ全体を炉に入れて加熱する従来の手法と異なり、周囲の光回路や金属電極への熱的な影響を削減することができます。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609085497-O3-8eyynvj7】 開発技術(レーザーアニール)の特長

 

2)シリコン光回路上で光アイソレータ動作を実証

本技術を用いて、光の干渉を利用する構造のデバイスを試作し、光アイソレータとして動作することを実証実験しました。実験では、信号として進む光(順方向伝搬)と、反射して光源に戻る光(逆方向伝搬)に相当する光出力を比較しました。その結果、光通信で使われる波長域において13.6 dBのアイソレーション比を確認し、戻り光を約20分の1に低減できることを確認しました。また、レーザーを照射した部分の磁気光学ガーネットが、シリコン導波路上で良好に結晶化していることも電子顕微鏡で確認しました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202609085497-O4-3PCcFJ1V
光アイソレータ動作の実証実験結果

 

■今後の展開 

京セラと東北大学は、これまでも光回路上へ集積可能な光アイソレータの技術開発を行ってまいりました※4。今後は、これら技術の実用化に向けて、さらなる低損失と高効率、量産のための生産性向上を目指します。両者は今後も連携を進め、効率的で持続可能な情報社会の発展に貢献してまいります。

 

※4 京セラと東北大学の先行共同研究成果(T. Sugita et al., “Nanocomposite Garnet-Enabled Monolithically Integrated Magneto-Optical Isolator Using an Asymmetric Mach–Zehnder Interferometer,” ACS Appl. Opt. Mater., vol. 4, no. 6, pp. 1813–1820, Jun. 2026, doi: 10.1021/acsaom.6c00176.)。

 

 

■論文情報

掲載誌: IEEE Access

論文タイトル: Monolithic Magneto-Optical Mach–Zehnder Isolator Using Laser-Annealed Iron Garnet on a Silicon Waveguide

著者: Tomoya Sugita, Reona Motoji, Yuki Yoshihara, Dan Maeda, Hiroki Yamamoto, Hibiki Miyashita, Kazushi Ishiyama, Taichi Goto

DOI: 10.1109/ACCESS.2026.3729586 ( https://doi.org/10.1109/ACCESS.2026.3729586

 

●「IEEE」は、The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の登録商標です。

開発技術(レーザーアニール)の特長
レーザーアニールを用いてシリコン光回路上に集積作製した、光アイソレータの顕微鏡画像
光アイソレータ動作の実証実験結果