【立正大学地球環境科学部】ネパール・中国国境付近の大規模土石流災害について衛星画像を緊急解析
学校法人立正大学学園
更新日時:9月3日 10時30分
永井裕人准教授、起点が「氷河湖決壊」ではなく「氷河末端部の大規模崩落」である可能性が高いことを指摘
立正大学地球環境科学部(埼玉県熊谷市、学長:北村行伸)地理学科の永井裕人准教授(専門:氷雪学・地理情報科学・衛星リモートセンシング)は、2026年8月にネパール・中国国境付近で発生した大規模土石流災害について、災害発生当日に撮像された地球観測衛星「Landsat-9」の画像を分析する緊急解析を実施いたしました。
※本稿は2026年8月28日時点の衛星画像に基づく緊急解析であり、数値および災害発生メカニズムの解釈は暫定的なものです。
解析の結果、今回の土石流は典型的な「山間部における地滑り・土砂ダム形成」ではなく、急斜面上に位置する「氷河末端部の大規模な崩落」を起点として発生した可能性が最も高いことが判明いたしました。
地理空間情報技術(リモートセンシング)を活用することで、アクセスが困難な高山地域における災害に対し、発生直後から現象の規模や発生源、流下経路を迅速に把握・解明することに貢献できます。
■ 緊急衛星解析の主なポイント(速報値)
発生源と最大幅約1kmに及ぶ流下跡を確認
災害発生当日の2026年8月26日4時47分(UTC)に撮像された衛星画像を解析した結果、氷河末端部の一部が大きく消失し、下流に向かって最大幅約1 kmに達する明瞭な流下跡が確認されました。
面積約1.9 k㎡、高度差約1,200mに及ぶ広大な変化
消失した範囲の面積は約1.9 k㎡に達し、標高約5,180 mから約3,970 mまで(高度差約1,200 m、奥行き約1,800 m)の領域で顕著な地形変化が生じていることが計測されました。(計測値は概算速報であり今後修正されうる)
「氷河湖決壊」ではなく「岩屑・氷混合型の大規模崩落」と推定
現地には直接的な原因となるような大規模な氷河湖が確認できないことから、氷河湖の決壊(GLOF)とは異なる現象と推測されます。急斜面上に位置する氷河末端部が不安定化し、氷河氷だけでなく周囲の岩盤や大量の岩屑を巻き込んで大規模に崩落、急峻な谷を高速で流下したというプロセスが最も整合的な解釈と考えられます。
永井准教授の考察全文は下記URLよりご参照ください。
ネパール・中国国境付近で発生した大規模土石流災害の衛星画像解析 – mapg4d
■ 永井 裕人 准教授 コメント
「このたびの災害により亡くなられた方々に深い哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。 地理空間情報を用いた衛星リモートセンシングは、現地への立ち入りやアクセスが困難な山岳地域で発生した災害において、現象の規模や発生源、被害範囲を把握するための極めて有効な手段です。今回の解析結果は災害直後の衛星画像に基づく暫定的な速報値であり、この知見をもとに、より詳しい観測によるメカニズム解明が求められます。」
■ 研究者プロフィール
永井 裕人(ながい ひろと) 立正大学 地球環境科学部 地理学科 准教授。 専門:氷雪学、地理情報科学、衛星リモートセンシング。これまでJAXA等で地球観測衛星データを駆使し、世界の雪氷環境変動や自然災害リスクに関する研究や数々の災害緊急観測に従事した。

