同じ家賃でも立退料は10倍以上の差 ― 過去3年間の立退き相談で見えた“金額の決まり方” ―
弁護士法人春田法律事務所
更新日時:8月18日 10時15分
立退料に相場はなく、交渉で当初提示の平均2倍に。実費未満の提示も目立ちました。
2026年8月13日
春田法律事務所
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608073904-O11-FTuVA3PP】
「立退料はいくらが妥当なのか」――。春田法律事務所(全国12拠点)は、同所が過去3年間(2023年5月〜2026年5月)に取り扱った立退きに関する相談・案件を分類・集計しました。
その結果、家賃が近い水準の物件でも実際に決着した立退料には10倍以上の開きがあり、立退料に一律の“相場”は存在しないことが明らかになりました。
さらに、大家からの当初提示額と最終合意額の両方をたどれた相談では、8割超が当初提示を上回る額で決着し、中央値でみると当初提示の約2倍に達していました。内容や交渉によって金額が大きく変わりうることが、データから示されました。
主な結果
1.同じ家賃でも、立退料は10倍以上の差
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608073904-O10-KPV58t9c】
立退料は、家賃に一定の倍率を掛けて機械的に決まるものではありません。今回の集計でも、月家賃が近い水準の物件どうしで、決着した立退料に大きな開きがみられました。
たとえば月家賃5万〜8万円台に絞っても、立退料は50万円から500万円まで分布し、その差は約10倍にのぼります。
金額を左右するのは家賃そのものではなく、立退きを求める側の事情の強さや、物件の用途・状況です。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M109183/202608073904/_prw_PT1fl_14m6MVKA.png】
2.立退料に一律の“相場”はない
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608073904-O12-2n9GAE2x】
金銭で決着した立退料は、最小25万円から最大1億4,800万円まで幅広く分布しました。平均は約331万ですが、額の大きい事業用案件に引き上げられており、実感に近い中央値は155万円です。
最も多いのは100万〜150万円の帯で、「これが相場」と一点で言える金額は存在しませんでした。ネット上でよく見る「家賃の◯か月分」といった目安は、あくまで一例にすぎません。
3.大家の当初提示は低めで、交渉で平均2倍前後に
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608073904-O7-8okOkJ09】
大家からの当初提示額と最終合意額の両方をたどれた相談では、83%が当初提示を上回る額で決着しました。当初提示の中央値70万円に対し、最終合意の中央値は150万円と約2.1倍。平均でも約110万円から約226万円へと増えていました。
当初提示が50万円未満だった例が34%あり、そのうち引越し・初期費用(礼金・敷金など)の実費にも満たないとみられる30万円未満の提示も17%を占めました。
当初提示をそのまま受け入れる必要はなく、交渉によって金額が上がる余地は大きいといえます。
なお、この割合は金銭で決着した相談を対象としたものです。立退きをめぐる相談には、大家からの請求が撤回されたり、賃貸借契約がそのまま継続したり、金銭以外の形で折り合いがついたりする例もあり、立退料を受け取ることだけが解決とは限りません。
それぞれの事情に応じて、最も納得のいく結論を目指すことが大切です。
よくある事例
【店舗/自社ビルの新築を理由とする立退き】
大家からの当初提示は600万円。代替となる店舗の確保が難しいことなどを踏まえて交渉を続け、最終的に1,000万円(+400万円)で合意しました。営業への影響(営業補償)が考慮された事業用の例です。
▶ 詳しくは:店舗立ち退きに伴う営業損害を交渉し、希望額の立退料を獲得した事例
【住宅/貸主都合による退去請求】
貸主都合の退去請求に対し、裁判例や立退料の相場を踏まえて主張を整理。受任から約2か月で、250万円の立退料を得て合意に至りました。
▶ 詳しくは:貸主都合の立退き請求に対し、250万円の解決金を獲得した事例
4.退去を求められた理由の上位は「老朽化」「建て替え・解体」
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608073904-O8-owm7oKO4】
退去を求められた理由として記載が多かったのは、建物の老朽化、貸主都合・更新拒絶、解体・取壊し、建て替えの順でした。
近年は、物件が売買された後に新しい所有者から立退きを求められる「オーナーチェンジ型」の相談もみられます。(理由は複数該当する相談があり、割合の合計は100%を超えます。)
5.店舗・事業用は住宅より高額化しやすい
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608073904-O9-CiBI129Q】
店舗や事務所など事業用物件の立退きは、住宅に比べて金額が高くなりやすい傾向があります。
住宅系(マンション・アパート・一軒家)の立退料が中央値150万円・平均178万円だったのに対し、事業用(店舗等)は中央値310万円・平均1,457万円でした。今回の最高額1億4,800万円も事業用案件です。
移転費用に加え、休業や移転による売上への影響(営業補償)が考慮されるためとみられます。
代表弁護士 春田 藤麿 コメント
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608073904-O6-8wD2J5b7】
「立退料に画一的な相場はなく、正当事由の有無や物件・使用形態、そして交渉によって金額は大きく変わります。実際、当初提示を上回って決着した例が8割を超えており、大家からの最初の提示をそのまま受け入れる必要はありません。
特に店舗や事業用物件は営業補償の観点から住宅とは考え方が異なるため、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。」
立退きで注意したいこと
●退去を求められても、必ず退去が必要なわけではありません
● 大家の当初提示を鵜呑みにしない(今回のデータでは8割超が交渉で増額)
●転居先や移転先を先に確定すると、交渉の余地が狭まりやすい
● 老朽化・建て替え・売却など、通知の「理由」によって進め方が変わる
関連情報
立退きに関する解説・相談窓口:
立退き問題に関するコラム
立退き問題に関する相談窓口
調査概要
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M109183/202608073904/_prw_PT2fl_6bb1H86G.png】
弁護士法人春田法律事務所 概要
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M109183/202608073904/_prw_PT3fl_AWPa9Lj6.png】

図2 立退料額の分布(円グラフ)

図1 家賃と立退料の関係

図5 住宅系と事業用の立退料

図4 退去を求められた理由

同じ家賃でも立退料は10倍以上の差 ― 過去3年間の立退き相談で見えた“金額の決まり方” ―

図3 当初提示と最終合意の比較

代表弁護士 春田 藤麿

