排熱デバイスの新設計によりNTN向け平面アンテナの47%の軽量化に成功
国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部
更新日時:6月17日 14時00分
衛星通信ユーザー端末としての動作を確認し、ドローンや車両への搭載が可能に
2026年6月17日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
シャープ株式会社
三菱ケミカル株式会社
株式会社テックラボ
ポイント
■排熱デバイスの新設計によりNTN向け平面アンテナを47%の軽量化
■新しい複合材料を用いた新設計の排熱デバイスをNTN向け平面アンテナへ統合し、必要な電気特性を確認
■軽量化した平面アンテナとモデムで構成された衛星通信ユーザー端末としての動作を確認
■ドローンや車両など多様なモビリティに衛星通信ユーザー端末の搭載が可能となり、NTN実現に大きく貢献
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 大野 英男)、シャープ株式会社(シャープ、CEO: 河村 哲治)、三菱ケミカル株式会社(三菱ケミカル、社長: 筑本 学)及び株式会社テックラボ(TECHLAB、代表取締役: 畠山 裕史)は共同で、NTN(非地上系ネットワーク)向け平面アンテナの47%の軽量化(5.5kg→2.9kg)に成功しました。
炭素繊維プリプレグとグラファイトシートを組み合わせた軽量で高い熱伝導性を有する新規複合材料を用いた「CFRP排熱デバイス」をNTN向け平面アンテナに統合することで、大幅な軽量化を実現しました。平面アンテナに必要な電気特性も確認できました。さらに、モデムを含めた衛星通信ユーザー端末としての動作も確認できました。
本成果により大幅な軽量化を実現し、広く普及している産業用ドローンのペイロード範囲内に収まる軽さを達成しました。より軽量で、そのまま搭載・動作が可能なユーザー端末を実現したことで、ドローンや車両など、搭載可能なモビリティの範囲を大きく広げました。これにより、山地や災害被災地における通信回線確保や、各種モビリティの位置情報のリアルタイム送信、自動運転への利用など、NTN実現に向けて大きく前進します。
背景
NTNにおける衛星通信は、山間部や海上、離島、被災地など、地上系移動通信が困難な環境でも高速通信を可能にします。一方で、NTN用衛星通信ユーザー端末用の平面アンテナは、衛星やHAPSを追尾する機能を必要とし、発熱量が非常に大きくなることから、高い排熱性能(熱伝導性)が求められます。また、衛星通信ユーザー端末を多様なモビリティへ搭載するためには、NTN向け平面アンテナの超小型化・軽量化が必要です。これまで4者は、熱伝導性と軽量性に優れる材料と、排熱デバイスの設計・成形加工・統合設計・評価を共同で研究開発し、衛星通信ユーザー端末用の平面アンテナの超小型化・軽量化を進めてきました。
今回の成果
今回、NICT、シャープ、三菱ケミカル及びTECHLABは共同で、排熱デバイスの新設計によりNTN向け平面アンテナの47%の軽量化を実現しました。本成果では、NICTは平面アンテナのアルミ製排熱デバイスの重量及び熱伝導性の課題から、軽量化のための排熱デバイスの設計指針を決定し、今回使用する新規複合材料の構成及びデバイス構造に関する研究開発を行いました(図1参照)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202606100665-O2-s70xT1X1】
左: アルミ製、右: 複合材料製
三菱ケミカルは複合材料を構成する炭素繊維プリプレグ及びグラファイトシートの材料開発を行い、TECHLABが複合材料を用いた排熱デバイスの設計及び成形技術を確立したことで、材料の軽量性と高い熱伝導性を活かした「CFRP排熱デバイス」を製作でき、排熱デバイス単体で1 kg以下を実現しました。また、シャープがこのCFRP排熱デバイスを平面アンテナに統合し47%の軽量化(5.5kg→2.9kg)に成功しました(図2、図3参照)。アンテナ特性を評価した結果、送信パターンの差分が端末誤差の範囲であること、受信利得特性に差がないことを確認しました。
さらに、今回開発したNTN向け平面アンテナをモデム等と統合し、衛星通信ユーザー端末としての動作も確認できました。より軽量で、そのまま搭載・動作が可能な端末を実現したことで、ドローンや車両など、搭載可能なモビリティの範囲を大きく広げました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202606100665-O3-sX5c9QmV】
図2 開発したNTN向け平面アンテナ(約45cm四方)
左: 表側外観、右: 裏側外観
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202606100665-O1-5SjH3Fp1】
図3 排熱デバイスとNTN向け平面アンテナ、通信モデムを統合した衛星通信ユーザー端末の構成イメージ
今後の展望
今後、排熱性能及び実装性の更なる詳細評価を進めるとともに、端末構成・用途に応じた最適な排熱デバイス設計を検討します。モビリティ搭載を想定した超小型軽量衛星通信ユーザー端末の実用化に向け、試作・実証を継続し、将来のNTN実現を目指します。
<各機関の役割分担>
・NICT: 排熱デバイスを含めた平面アンテナ全体設計・シミュレーション、軽量化方針の検討
・シャープ: NTN向け平面アンテナ(衛星通信ユーザー端末)開発及び統合評価
・三菱ケミカル: 排熱デバイスに用いる炭素繊維プリプレグやグラファイトシートなどの材料開発
・TECHLAB: 炭素繊維プリプレグやグラファイトシートを用いたCFRP設計及び成形加工(排熱デバイス化)

図3 排熱デバイスとNTN向け平面アンテナ、通信モデムを統合した衛星通信ユーザー端末の構成イメージ

図2 開発したNTN向け平面アンテナ(約45cm四方) 左: 表側外観、右: 裏側外観

図1 各材料の排熱デバイスの構造 左: アルミ製、右: 複合材料製

排熱デバイスの新設計によりNTN向け平面アンテナの47%の軽量化に成功

