電通と電通デジタル、人とAIの協働を深化させる5つの研究成果を人工知能学会で発表へ
株式会社電通
更新日時:5月28日 11時15分

創造性の拡張から評価・判断の高度化まで、広告・マーケティングの知をアップデート

2026年5月28日
株式会社  電 通

 株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:松本 千里)と株式会社電通デジタル(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:瀧本 恒)は、生成AIと大規模言語モデル(Large Language Model 以下、LLM)活用における「創造性の拡張」と「評価・判断の高度化」をテーマに実施した人とAIの新たな協働のあり方を探る5つの研究成果を、6月8日(月)から開催される人工知能学会全国大会※1で発表します。

 

【発表論文】

1.創造的生成モデル「常識の逸脱」を学習する Counter-Intuitive Chain of Thoughtを用いた創造的生
   成モデル

   URL: https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsai2026/presentation/2N6-GS-2x-02

2.他者の思考様式を学習したAIとの協働が 創造的タスクの成果に与える影響

   URL: https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsai2026/presentation/1G4-OS-13b-03

3.Training-Free GRPO による Criteria Drift 観測 広告コピー品質評価のための自己進化型評価基準

   URL: https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsai2026/presentation/1G4-OS-13b-01

4.LLMを活用したペルソナベースのデルファイ法による多視点都市政策評価

   URL: https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsai2026/presentation/1G4-OS-13b-05

5.図形楽譜の視覚的質感を音響へ変換する生成的解釈の試み

   URL: https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsai2026/presentation/5F3-GS-10s-01

 

*発表論文の閲覧には、人工知能学会全国大会開催前~会期中(〜6月12日)は当該大会への参加者登録ならびにログインが必要です。また、当該大会開催後の7月初旬ごろJ-STAGEの「人工知能学会全国大会論文集」ページ※2よりどなたでも閲覧可能です。

 

 具体的には、次の5つの研究成果を取り纏めています。

 

1.創造的生成モデル「常識の逸脱」を学習する Counter- Intuitive Chain of Thoughtを用いた創造的生成モデル

 本研究では、常識的な解に収束しがちなLLMに対し、熟練したクリエイターが用いる「常識をあえて否定し、非連続な飛躍に至る思考プロセス(CI-CoT)」を教師データとして与え、Supervised Fine-Tuning(教師ありファインチューニング:SFT)により学習させる手法を提案しました。実験の結果、提案モデルは平均的・常識的な解を意図的に回避し、逆転や誇張、概念の結合といった思考を通じて、高い新規性を持つアイデアを生成できることを確認しました。これは、LLMの創造性がランダム性の付与によるものではなく、思考プロトコルの学習によって獲得・制御可能であることを示しています。今後の展望として、生成されたアイデアが「創造的な逸脱」か「不適切な逸脱」かを判別する評価器(Critic)の開発や、それを用いた強化学習(RLHF)※3によるモデルの洗練が挙げられます。また、非常識な発想を生成するGeneratorと、それを社会通念に照らして調整するDiscriminatorを対抗させる、GAN的なアプローチも有望であると考えられます。

 

2.他者の思考様式を学習したAIとの協働が 創造的タスクの成果に与える影響

 本研究は、自己パーソナライズAIと他者パーソナライズAIとの協働を比較し、AIペルソナの性質が創造的成果に与える影響を実証的に検討しました。その結果、自己パーソナライズAIは作業のしやすさや信頼感といった操作性において優位で、一方他者パーソナライズAIは独創性および発想の広がりを高める傾向を示しました。 さらに、参加者とAIの思考スタイル距離に着目した分析から、創造性は単純な同質性や最大限の異質性によって高まるのではなく、中程度の距離において最大化される可能性が示唆されました。以上より、創造的タスクにおけるAI設計においては、単なる自己最適化ではなく、「適度な他者性」を戦略的に導入することが重要であると結論づけられます。

 

3.Training-Free GRPO による Criteria Drift 観測 広告コピー品質評価のための自己進化型評価基準

 本研究では、広告コピー品質評価における評価基準の自動進化を目的として、Training-Free GRPO(TF-GRPO)を適用し、評価基準が改善過程で変容していく「Criteria Drift」を実証的に観測しました。段階的な改善手法を用いた実験の結果、全モデルにおいて評価精度(R1,F1)の向上が確認され、特にドメイン知識を固定的に注入することで、基準抽出の再現性が大幅に改善されました。一方で、Criteria Driftの効果にはモデル依存性が見られ、モデル規模や推論能力と改善余地のバランスが重要であることが示唆されました。本研究は、これまで暗黙知として専門家に依存してきた評価基準を、自動的に言語化・進化させる新たな枠組みを提示するものであり、広告コピー評価にとどまらず、教育、生成AIの評価、熟練判断が求められる分野への応用可能性を示しています。

 

4.LLMを活用したペルソナベースのデルファイ法による多視点都市政策評価

 本研究では、LLMを用いたペルソナとファシリテーターに基づくデルファイ法※4に類似した反復評価プロセスによって、都市政策案を多様な視点から評価する手法を検証しました。PeopleModel※5を基に構成した500のAIペルソナに対し、都市政策案を13の評価軸で3ラウンドにわたり評価させることで、総合評価の推移に加え、支持要因・懸念要因・不足情報の構造を分析しました。本研究は、合意形成そのものを自動化するのではなく、政策公表前の段階で「どこが争点になりやすいか」「何を説明資料で補うべきか」を低コストかつ再現可能に可視化する枠組みとして、都市政策の初期検討や説明設計への応用が期待されます。

 

5.図形楽譜の視覚的質感を音響へ変換する生成的解釈の試み

 図形楽譜は、五線譜や音名ではなく、線や図形、記号などの視覚的要素によって演奏の手がかりを提示する楽譜として、現代音楽や実験音楽の領域で用いられてきました。本研究では、コーネリアス・カーデューの図形楽譜<Treatise>を対象に、画像と言語の対応関係を学習した視覚言語モデルCLIPと音楽生成モデルMusicGenを組み合わせることで、図形の形状や線の太さ、質感といった視覚的特徴を音響へ変換する手法を提案しています。さらに、視覚情報による制約とAI生成に伴う不確定性が併存する条件を検証することで、図形楽譜の多義性を保持したまま音響化する枠組みを示し、実験音楽やメディアアートにおける新たな制作・上演の可能性を示しました。

 

 

(国内電通グループ独自のAI戦略について)

 企業の業務効率化や品質向上はAI活用によりますます加速しています。現在、AI活用は企業にとって重要な経営アジェンダの一つとなり、その研究も加速度的に進められています。特にマーケティング領域では、より解像度の高い分析や出力に向け、「機能性」ならびに「人の嗜好性理解」の両側面での高度化が求められています。

 当社は、2024年8月に発表した国内電通グループにおける独自のAI戦略「AI For Growth」のもと、広告クリエイティブにおけるAIソリューション開発に先駆的に取り組んできました。同年、当社のコピーライターが長年培ってきた思考プロセスを学習した AI広告コピー生成ツール「AICO2」※6を電通デジタルと共同で開発・導入したほか、事業・サービス開発を支援するサービス提供も開始しました。また電通デジタルは、AIを活用した統合マーケティングソリューションブランド「∞AI®(ムゲンエーアイ)」※7を提供し、多くの企業のデジタルマーケティング活動の高度化に貢献しています。

 

 今後も電通と電通デジタルは、今回の研究の成果を生かし、人とAIの掛け合わせによる可能性を拡張することで、AIソリューションの更なる進化を図り、新たなマーケティング戦略や商品開発、広告企画への活用、広告手法の研究・開発、広告評価、アイデア評価などの革新を進めてまいります。

 

※1 2026年度の人工知能学会全国大会(第40回)が、2026年6月8日(月)から12日(金)までの期
    間、Gメッセ群馬とオンライン会場で開催。

    https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2026/

※2 J-STAGE「人工知能学会全国大会論文集」ページ

    https://www.jstage.jst.go.jp/browse/pjsai/-char/ja

※3 RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback) 人間の評価(フィードバック)を使っ
    て、AIの振る舞いを良くする強化学習の手法

※4 デルファイ法

    複数の専門家に同一の質問を複数回行い、その結果を集約することで合意形成を図る手法。

※5 People Model

    当社が独自構築している大規模調査データを、LLMを活用してファインチューニングすることで、

    1億人規模の高解像度なペルソナを仮想再現するAIモデル。

    https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0406-011026.html

※6 電通コピーライターが長年培ってきた思考プロセスを学習した AI広告コピー生成ツール「AICO2」
    を開発

    https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0805-010761.html

※7 「∞AI」

    https://www.dentsudigital.co.jp/services/data-ai/mugen-ai

 

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【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605259621-O3-3Kn8Swx3

国内電通グループは、“人間の知(=Intelligence)”と“AIの知”の掛け合わせによって、顧客や社会の成長に貢献していく独自のAI戦略「AI For Growth」を推進しています。

AI For Growthについては、以下ウェブサイトをご確認ください。

https://www.dentsu.co.jp/labo/ai_for_growth/index.html
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                                              以上