日系企業初 英国ロンドンで木造増改築によるオフィス開発
住友林業株式会社
更新日時:1月20日 15時45分
~建物性能向上と木造の増改築でライフサイクル全体のCO2排出量を大幅削減~
2025-1月20日
住友林業株式会社
芙蓉総合リース株式会社
住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区、以下 住友林業)と芙蓉総合リース株式会社(社長:織田 寛明 本社:東京都千代田区、以下 芙蓉リース)は英国ロンドンで木造の増改築によるオフィス開発「Golden Laneプロジェクト(以下、本プロジェクト)」を開始します。同国で木造の増改築によるオフィス開発は日系企業として初めてです。※1
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501203097-O8-jZ6CfIh6】
本プロジェクトは、ロンドン中心部にある1900 年代初頭に建築された5 階建のオフィスを取得し、1~4 階部分は既存オフィスの構造を保存しつつ内装工事や環境性能を向上する改修工事を行い、5~6 階部分をマスティンバー※3による木造で増築するものです。既存オフィスの活用と木造の増改築により環境配慮と賃貸床面積の増床による収益性の向上を実現します。総事業費は、約22.8百万GBP(約45億円※4)で2024年12月に着工し2026年1月の完成、賃貸開始を目指します。開発主体は住友林業グループ会社のBywater SFCグループ(以下、Bywater SFC社)※2と芙蓉リースの共同出資会社です。住友林業の100%子会社住友林業アセットマネジメント株式会社(代表取締役:木佐貫 成大 本社:東京都千代田区)がプロジェクト組成に関する取り纏めや調整をします。Bywater SFC社を環境配慮型不動産開発に特化したデベロッパーとし、本プロジェクトを皮切りに英国での木造のオフィス開発事業の拡大に取り組んでいきます。
■物件「Golden Lane」(ゴールデン レーン)の特徴
本プロジェクトでは、既存の鉄骨造建物を解体するのではなく、その構造を活用した上で木造の増改築とすることで、解体・再建築する場合や鉄骨造での増改築と比較して建物のライフサイクル全体でのCO2排出量を大幅に削減する計画です。また、開発によって排出される廃棄物の削減や現地の人々に古くから愛される街並みの保護にもつながり、脱炭素面の効果に加えて景観保護の観点からも期待される開発モデルです。加えて木造は鉄骨造より軽量のため、既存構造の補強を最小限に抑えた増築工事が可能であり、工期の短縮も見込めます。
【エンボディドカーボン排出量削減】
資材の製造、運搬、建設、修繕、解体などにかかる「エンボディドカーボン」について、CO2排出量を見える化するソフトウェア「One Click LCA」※5で試算します。設計段階の試算の結果、資材の調達から建設工事完了までの期間のCO2排出量は英国の一般的なオフィスビルの新築と比較し約60%削減が可能なことに加え、増築部分を木構造とすることで建物全体の炭素固定量は約220トン(CO2e)となる試算です。
【オペレーショナルカーボン排出量削減】
エネルギー消費や水利用など建物の運用に際して発生する「オペレーショナルカーボン」を、省エネ性能の高いエレベーターや照明などの設備の導入、気密・断熱性の高い窓やドアの利用などで削減します。建築物の稼働中のエネルギー効率を示す「EPCレート」※6は現在のE からB 以上に向上する計画です。材料や調達、工事等も含めた環境配慮認証であるBREEAMもExcellent以上を取得予定です。※7建物のライフサイクル全体の環境負荷を可視化し、CO2排出量の削減とともに木材に炭素を長期間固定することにより、脱炭素社会の実現に貢献します。
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■環境配慮型不動産開発を行う背景
世界の産業別のCO2排出量のうち37%が建設セクターから排出されており、エンボディドカーボン・オペレーショナルカーボンの排出量を含めた建物のライフサイクル全体のCO2排出量の削減が求められています。※8
英国政府は2050年までにGHG(温室効果ガス)排出量をカーボンニュートラルにする目標を掲げており、オペレーショナルカーボンの排出削減に向け、「EPCレート」がFレベル以下の建物の賃貸(新規契約・更新を含む)をすでに禁止しており、2030年にはBレベルに満たない非住宅建物の賃貸を禁止する方針です。一方、2023年時点で Bレベル以上のオフィス物件は英ロンドンで2割程度と環境性能基準を満たしたオフィスの供給が不足しており、今後環境性能の高い建物の需要拡大が予想されます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501203097-O11-vME19NV2】
■エリアの特徴
本物件は数多くの建築事務所やショールームが立地するクラーケンウェルに位置。ファリンドン駅やバービカン駅、オールドストリート駅など最寄り駅まで徒歩約6~10分。バス停留所からも徒歩約30秒と交通アクセスも良好です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501203097-O5-ywb0VAnW】
■今後の方針
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を掲げ、「森林」「木材」「建築」の分野で住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回して森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定。社会全体の脱炭素への貢献を目指しています。長期ビジョンで事業方針の1つに掲げた「グローバル展開の進化」を推進し、英国でも脱炭素化への取り組みを加速します。
芙蓉リースグループは、2022 年度からスタートした中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」で、CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の実践を通じた社会課題の解決と経済価値の同時実現により、企業グループとして持続的な成長を目指しています。また、「不動産」を差別化・合理化により収益性の維持・向上を目指す分野に位置づけ、パートナー企業との連携を含めた事業領域の拡大を進めています。本プロジェクトへの参画を通じ、脱炭素社会の実現に向けた環境配慮型不動産の普及推進に取り組むことで、豊かな社会の実現と持続的な成長に貢献します。
※1. 住友林業調べ
※2. 住友林業と英不動産開発会社Bywater Properties社(代表:Theo Michell、本社:英国ロンドン)の創業者との合弁会社
※3. 複数の木材を組み合わせて成形した比較的質量の大きいエンジニアードウッド。
※4. 英国ポンド(GBP)=196.03円(2025年1月6日時点のTTMレートで換算)
※5. 住友林業が日本単独代理店契約を締結したソフトウェア。建設にかかる原材料調達から加工、輸送、建設、改修、廃棄時 のCO2排出量
(エンボディドカーボン排出量)を精緻に算定できる。( 関連リリース:https://sfc.jp/information/news/2022/2022-08-08.html )
※6. EPCは2007年から欧州連合政策として開始した、建物のエネルギー効率をA(高)~G(低)レベルに分類して評価する制度。
※7. BREEAMは1990年より運用開始となった英国発の建築物環境性能評価制度。エネルギー、健康と快適性、水、材料、廃棄物等の計10の項目において評価され、Pass, Good, Very Good, Excellent, Outstandingの5段階で評価される。
※8.出典:Alliance for Building and Construction(2023)
物件概要(予定)
物件名 :Golden Lane
所在地 :123 Golden Lane, London EC1Y 0RT, UK
プロジェクトタイプ :オフィス(増改築)
賃貸面積 :1853.75m2
構造 :1~4階 S(鉄骨)造、5~6階 木造増改築
取得認証 :BREEAM Excellent以上
着工 :2024年12月
賃貸開始 :2026年1月
竣工 :2026年1月
Bywater SFC社概要
本社 :英国ロンドン
所在地 :53-64 Chancery Lane, London WC2A 1QS, United Kingdom
代表者 :Patrick O' Gorman (CEO)
設立 :2023年2月
事業概要 :住友林業の100%子会社Sumitomo Forestry Europe Ltd.(社長:中川 御、本社:英国ロンドン)と英国の不動産開発事業者Bywater Properties社の合弁会社。不動産開発プロジェクトへの投資・開発管理を行う。今後、環境性能及びEPCレートが高いアセットを整備し、欧州の最先端の脱炭素レギュレーション及び住宅・オフィス不足という社会課題の解決を目指します。
【住友林業 補足資料】
■欧州事業の取り組み
【欧州事業の沿革】
住友林業グループは1995年にオランダ・アムステルダムに駐在員事務所を開設して以降、現地サプラ イヤーと幅広いネットワークを構築して日本向けに欧州産の良質な住宅用木材製品を安定供給してきました。また、欧州では人口の都市部集中などで住宅が慢性的に不足していることや、環境認証を取得した建築プロジェクトやCLT(直交集成板)を使った中大規模木造建築の開発事例が増えていることから、新規事業の市場調査を進めてきました。
その中で、ロンドンにおける木造6階建てのオフィス開発Paradise PJに参画することを決定し、2022年2月に英国現地法人Sumirin UK, Ltd.を設立し英国不動産市場に進出しました。その後2023年2月にParadise PJのデベロッパーであるBywater Propertiesの創業者とBywater SFC社を設立し、木を活用した環境配慮型不動産開発事業に本格的に参入しました。
その後、2023年8月には英国を含む欧州市場全体における木材・建材の流通・製造事業等の事業拡大を目的に上記アムステルダム駐在員事務所をSumirin UK, Ltd.に統合すると同時に商号をSumitomo Forestry Europe Ltd.に変更しました。当社グループの欧州拠点として事業を拡大し、木材の利活用を促進し、木造建築の普及と炭素固定により「ウッドサイクル」の実現に取り組んでいます。
【環境配慮・住宅不足解消に貢献する不動産開発】
2022年の英国不動産市場への進出以降、木を活用した環境配慮型不動産開発を推進しており、現在までにロンドン及びマンチェスターにおいて木造での新築もしくは増改築の開発案件4件に着手しています。これらの案件では、英国や欧州において木造の実績や経験が豊富な設計事務所やゼネコン、サブコン等との協業に加え、環境認証やEPCレートB以上の取得、プロジェクトのライフサイクル全体から排出されるCO2量を算出する計画です。Bywater SFC社として、市場の成長が続く賃貸集合住宅開発事業にも進出し、英国の社会課題である住宅不足の解消にも寄与します。
【組成済み開発案件の概要】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501203097-O1-joTxk25y】
■住友林業グループの不動産開発事業
住友林業グループは日本国内に加え、米国でツーバイフォー工法の大規模な木造集合賃貸住宅、豪メルボルンで15階建、英ロンドンで6階建、米ダラスで7階建のマスティンバー建築のオフィスビルを開発するなど、海外でも中大規模木造建築を手掛けています。特に米国では2018年の賃貸用集合住宅事業への参入以降、海外子会社3社を通じ、※1大手デベロッパーや日系企業とのJV(ジョイントベンチャー)事業による集合住宅、商業オフィスの開発を拡大。2023年に集合住宅の年間着工戸数3,853戸と全米で9位相当まで成長し※2戸建分譲住宅に次ぐ事業の柱として拡大を続けています。英国でも環境に配慮した不動産開発やマスティンバー等を用いた中大規模木造建築を推進。新たな事業の柱の創出と持続可能な社会の実現に向け省エネや創エネと、森林や木材の吸収・固定の機能を組み合わせた「ネットゼロカーボン建築」の展開を目指しています。今後も中大規模木造建築を国内外で展開し、脱炭素社会に貢献していきます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501203097-O6-6EjyH0b1】
※1.Crescent Communities、JPI Holdings、SFA MF Holdingsで不動産開発事業を展開
※2.全米集合住宅事業者ランキングNMHC2024をもとに自社集計
■参考リリース
・2022年2月14日:欧州初進出 英国ロンドンにて木造6階建て環境配慮型オフィス開発事業に参画
https://sfc.jp/information/news/2022/2022-02-14-01.html
・2023年2月14日:英国不動産市場本格参入に向け合弁会社を設立
https://sfc.jp/information/news/2023/2023-02-14.html