ヒトの温熱感覚に関わる脳部位と活動パターンを発見
早稲田大学
更新日時:12月12日 11時00分
脳波解析による温熱環境の客観的評価への試み
ヒトの温熱感覚に関わる脳部位と活動パターンを発見
― 脳波解析による温熱環境の客観的評価への試み ―
詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102172/202412121561/_prw_OT1fl_MBcl5TnA.png】
早稲田大学人間科学学術院の永島 計(ながしま けい)教授、同持続的環境エネルギー社会共創研究機構環境エネルギーシステム総合研究所の渡邊 裕宣(わたなべ ひろのり)次席研究員らの研究チームは、ウエアラブル型の簡便な脳波計を用い、ヒトの温熱感覚に関わる脳の部位と活動パターンを発見しました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412121561-O2-ESxQR2SE】
実験方法と結果の概要
「暑い」「寒い」「熱い」「冷たい」などと表現される温熱感覚は、われわれの日常生活の中でも身近な意識にのぼる感覚です。末梢神経での温度受容の分子機構は明らかになっているものの、ヒトが温度情報をいかに認知し、評価するかは未だ不明な部分が多くあります。
本研究チームによる以前の研究で、機能的MRIを用いて、熱さ、冷たさに関わる共通する脳部位を同定しました。しかし、これらの2つの感覚がいかに分別されているかは不明のままでした。本研究ではウエアラブル型の簡便な脳波計を用い、指先に刺激した温冷刺激時に活動する脳部位と脳活動パターンを明らかにしました。脳部位のいくつかは以前に明らかにされたものと共通でしたが、温、冷刺激各々に特徴的な活動パターンが観察されました。
本研究成果は『Neuroscience』(論文名:Spatial and temporal patterns of brain neural activity mediating human thermal sensations)にて、2024年11月24日(日)にオンラインで掲載されました。
■研究の波及効果や社会的影響
意識にのぼる温熱感覚に関わる脳機構は未だ明らかでない部分が多く、本研究は新しい方法論や知見を導いた意味で大きなステップとなると信じています。また、温熱感覚の評価は未だ質問紙や点数化した評価申告などの主観的評価が用いられており、大きな問題を抱えています。特に室内環境の維持に重要な空調技術の進化は目覚ましいものがありますが、一方で、その制御目標となるパラメーターである温熱感覚が主観的評価でしかなしえない、という大きなギャップがある状態です。主観的評価の曖昧さや個体間の感受性の違いによる健康被害(特に冷房空調空間での寒さ)を改善するための評価方法や制御技術の進化に本研究は貢献できると考えています。
■研究者のコメント
意識にのぼる温熱感覚は、ヒトの行動や適切な屋内環境を決定する上で重要な因子です。本研究の代表者は、長く温熱感覚の脳機構の解明、モニタリング法の開発に取り組んできましたが、良い答えを見つけることができずにいました。今回の研究は、空調や脳波研究の専門家の協力を得て完成し得たものです。今後の研究や産業創出の大きな流れの起爆剤になる結果であると信じています。
■論文情報
雑誌名:Neuroscience
論文名:Spatial and temporal patterns of brain neural activity mediating human thermal sensations
執筆者名(所属機関名):渡邊 裕宣*(早稲田大学)、渋谷 賢(杏林大学)、増田 雄太(京都府立大学)杉 泰佑(早稲田大学)、齋藤 潔(早稲田大学)、永島 計**(早稲田大学)*筆頭著者 **責任著者
掲載日時:2024年11月24日(日)
掲載URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S030645222400633X
DOI:https://doi.org/10.1016/j.neuroscience.2024.11.045
■研究助成
研究費名:日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) JSPS JP 19H01128
研究課題名:湿度の感性、生理への影響の探索
研究代表者名(所属機関名):永島 計(早稲田大学)