モビリティサービスを使いやすく
国立研究開発法人産業技術総合研究所
更新日時:12月12日 14時00分

移動体の位置情報のやりとりを容易にする国際規格が発行

ポイント

・ 人や車、台風など時間によって変わる移動体の位置やさまざまな属性情報にインターネットを介してアクセスするための標準的な方法を提供

・ 異なるデータソースからの情報を組み合わせた高度な分析を容易に

・ スマートシティの実現や災害対応の高度化など、持続可能な社会の構築に貢献

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412111474-O1-8vtC3Cv2

 

人や車、台風など移動体の位置や属性など、時間の経過と共に変化する移動体データ(Moving features data)を照会し、また、それにアクセスするための標準インターフェースを規定した国際規格OGC API - Moving Features - Part 1: Core(以下「本規格」という)が発行されました。OGC(Open Geospatial Consortium)は企業、研究機関、政府機関、非営利団体など多様なステークホルダーが参加し、地理空間情報の相互運用性を促進するオープンな国際標準化団体です。地理空間データの交換形式やサービスインターフェースなどの共通基盤となる規格を策定し、製品およびサービスの開発者と利用者に向けた重要な標準を提供しています。

 

移動体データは、移動の位置だけでなく、特定の時間における台風の中心気圧やタクシーの乗車人数の情報など、さまざまな現象を表すことができます。これらのデータを活用することで、交通管理、災害対策、環境モニタリングなどの分野への応用が期待されています。本規格の制定により、大規模な移動体データへのアクセスが容易になることで、新しいモビリティサービスの展開や、スマートシティの実現を通して、持続可能な社会の構築に貢献し、多様な価値創出が促進されます。

 

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は2007年よりAssociate memberとしてOGCの活動に参加しています。今回、移動中の位置と時間を組み合わせた軌跡などの移動体データに関する国際標準を策定する作業グループであるOGC Moving Features Standards Working Group(以下「OGC MF SWG」という)と協力して、移動体の位置情報を円滑に流通させるためのウェブサービスインターフェース仕様を開発し、本規格の発行を主導しました。

 

下線部は【用語解説】参照

 

社会課題の解決

近年、測位技術の進歩により、人や車、台風など移動体の時間によって変化する位置情報が大量に収集・蓄積されています。これらのデータは、公衆衛生管理、災害時の効率的な避難誘導、ライドシェアサービスなど、多岐にわたる活用が期待されています。今までに発行された移動体に関するデータ構造の国際規格ISO 19141およびOGC Moving Features Accessのデータアクセス仕様は、移動体の位置情報に関するデータモデルや、特定の時間を指定して位置情報にアクセスするためのインターフェースについて抽象的な仕様が定義されました。しかし、その仕様を実装するための具体的な技術的方法は提示されていませんでした。そのため、異なるソフトウエアやシステム間で相互に通信できず、企業や組織で独立したサービスが運用され、相互の連携や情報共有が困難でした。

 

本規格は、他のOGC APIサービスと相互連携しつつ、移動軌跡や移動方向、移動速度などの移動体の属性を取得する操作や、指定した空間および時間範囲に基づいて移動体を検索する操作といったコア機能を定義し、データ表現、アクセスプロトコル、制約などを明示しています。特に、データ表現にOGC MF-JSON形式を採用することで、さまざまな種類の移動体に対する動的属性情報を記述できるようになりました。サービス利用者は、複数のデータソースから移動体の位置情報、時間情報、属性情報を、統一されたインターフェースで簡便に検索・取得できるため、移動予測、衝突検知・回避、移動最適化などのより高度で詳細なデータ分析や統合が可能になります。サービス提供者は、自社のニーズに応じて必要な機能を柔軟に選択し、効率的な実装を行うと共に異なるシステムやプラットフォーム間での一貫性のあるデータ処理が可能になります。

 

規格発行までの道のり

産総研は、2016年からOGC MF SWGのワーキンググループ共同議長として、2017年3月のOGC Moving Features Access(OGC 16-120r3)発行、2020年6月のOGC MF-JSON形式(OGC 19-045r3)発行など、移動体データの流通を促進する国際標準規格の開発に大きく貢献してきました。特に、移動体の情報を活用するデータモデルや、サービスインターフェース、データ品質管理などの標準化活動を推進しています。2022年度から台湾、ベルギーとの国際連携により、移動体の時空間データおよびサービスの相互運用性を提供するため本規格のドラフトを提案し、このたびOGC標準に採択されました。

 

 

今後の予定・波及効果

OGC移動体のサービスインターフェースは4つのパートの標準化を推進しており、今後は残っている3つのパート「ストリーム」、「フィルター」、「プロセス」に関する開発チームを構成し、規格開発を目指します。また、標準の普及促進活動、海外展開に向けたISO、IECなど国際標準化団体における活動と共に、次世代モビリティサービスの市場拡大に貢献します。

 

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M107968/202412111474/_prw_PT1fl_bLa9m0D5.png

 

用語解説

OGC API (Application Programming Interface)

OGCが開発している、地理空間データや位置情報サービスにアクセスするための、RESTアーキテクチャに基づいて標準化されたAPI仕様。

 

モビリティサービス

人々や物の移動を支援するサービス全般を指し、従来の公共交通機関やタクシーに加え、ライドシェア、自動運転などの新しい技術やビジネスモデルを活用した移動手段が含まれる。

 

OGC Moving Features Standards Working Group

OGC内の標準規格を開発する作業部会で、移動体に関する応用分野のための標準の開発・改良を担当するグループ

 

ISO 19141

地理情報に関する国際標準を開発するためのISO技術委員会(ISO TC211)で発行した地理情報のスキーマの一部として、移動体の位置情報の変化を表現するための幾何学的表現を中心にデータモデルを定義した規格。

 

OGC Moving Features Access

移動体の位置情報に関するデータモデルや、特定の時間を指定して位置情報にアクセスするためのインターフェースに対し、データを検索・取得するための抽象的な仕様。2016年にOGCが策定した(関連情報:2017年3月13日産総研プレス発表)。

 

OGC MF-JSON(Moving Features Encoding Extension - JSON)

移動体のデータをJSON形式で表現するための標準フォーマット。2016年にOGCによって定義された(関連情報:2020年6月2日産総研プレス発表)。

 

 

プレスリリースURL

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241212/pr20241212.html